勃起不全(ED)に対して改善効果が期待できるといわれているPC筋トレーニング。
サプリメントや薬などに頼ることなく、EDに対しての根本的なアプローチが可能とされることから注目を集めています。
特に、軽度〜中等度のEDに対しての改善効果が認められており、医療機関でのED治療とPC筋トレーニングを並行することで、より持続的な性機能の回復が期待できます。
この記事では、EDに悩む男性におすすめのPC筋の鍛え方について詳しく解説します。

新千歳クリニック理事長
宮井 保尚
新千歳クリニックコラムサイトは医学的、専門的な内容のため新千歳クリニック理事長の宮井保尚監修の元制作しております。 経歴:久留米大学医学部医学科卒業 資格:日本整形外科学会認定専門医、日本整形外科学会認定リハビリ医、日本リハビリステーション学会専門医、日本人工関節学会認定医 所属:日本美容皮膚科学会
PC筋はどこ?役割と筋力低下による影響
PC筋といわれても、いまいちピンとこないという方もいるでしょう。
PC筋という筋肉が弱くなると、勃起不全(ED)以外にも様々な症状が現れます。
この章では、PC筋とはどんな筋肉なのか、どんな役割を担っているのかについて詳しく解説します。
PC筋は恥骨と尾骨を結ぶ筋肉
PC筋の正式名称は、「恥骨尾骨筋(ちこつびこつきん)」といいます。
この恥骨尾骨筋(PC筋)は、骨盤底筋群と呼ばれる筋肉グループの一部で、骨盤内の膀胱や直腸、前立腺などの臓器を下から支えています。
恥骨という骨盤の前下方の骨から尾骨という背骨の末端の骨にかけてハンモックのように伸びており、PC筋は骨盤底筋群の中で最も大きな筋肉です。
PC筋の役割
PC筋は性機能に関わるだけでなく、体の健康にも関係する筋肉です。
排尿・排便のコントロールや姿勢の安定性、内臓の健康にも深く関係しています。
そのため、PC筋が弱くなると勃起不全(ED)以外にも、体に様々な影響を及ぼす可能性があります。
PC筋の筋力低下による影響
PC筋の筋力が低下すると勃起不全(ED)だけでなく、以下のような症状が現れることがあります。
- 性機能の低下(ED・持続力の低下)
- 排尿のコントロール(頻尿・尿もれ)
- 臓器下垂
- 姿勢や体幹の安定性が低下
PC筋は加齢や運動不足、慢性的な咳や重いものを持ち上げる習慣などによって、筋力が衰えていきます。
PC筋を鍛えることは、体の健康を維持するためにも効果的でしょう。
PC筋とBC筋の違い
骨盤底筋群をさらに細かくみていくと、PC筋のほか、BC筋という筋肉があります。
PC筋とBC筋、それぞれの特徴を以下の表にまとめました。
PC筋 | BC筋 | |
---|---|---|
筋肉の位置 | 恥骨と尾骨の間 | 肛門付近 |
役割 | 勃起機能に関与 | 尿や精液の勢いに関与 |
PC筋は血流を保持する筋肉で、勃起力の維持に必要な筋肉です。
それに対し、BC筋は射精や排尿の勢いに関係した筋肉のため、衰えてくると勢いの低下につながります。
PC筋を鍛えるメリットや効果
次に、PC筋を鍛えることの大きなメリットについてみていきます。
PC筋をトレーニングすることで得られる効果は勃起力や持続力のアップ、射精コントロールの向上などです。
また、頻尿や尿漏れに悩んでいる方にもPC筋のトレーニングはおすすめです。
以下でそれぞれ詳しく解説します。
勃起力や持続力がアップ
PC筋トレーニングを行うことで得られる大きなメリットは、勃起力と持続力がアップすることです。
勃起は、陰茎への血流の増加と海綿体が血液で満たされることで起こります。
PC筋は陰茎の根元にある血管を囲むように位置しているため、定期的にPC筋トレーニングを行うことで効率的に血流をコントロールできるようになり、勃起の硬さや維持の向上に繋がるといわれています。
射精のコントロール力が向上
射精は、PC筋がリズミカルに収縮することで精液を排出するというメカニズムです。
PC筋を鍛えつつ、収縮と弛緩をコントロールする感覚を鍛え、射精を我慢するためにPC筋を締めることで早漏の改善が期待できます。
PC筋トレーニングは、早漏で悩む方のセルフケアとしてもおすすめです。
ただし、早漏の原因は心理的な要因や神経系の問題の場合もあるため、症状が重い場合は専門医に相談することが大切です。
頻尿や尿漏れの改善
PC筋を含む骨盤底筋群が弱まると、尿もれや頻尿といった症状が出るほか、以下のような症状のリスクも高くなります。
- 腹圧性尿失禁・・・咳やくしゃみをした時に、意図せず尿が漏れる
- 切迫性尿失禁・・・突然強い尿意に襲われ、我慢できずに尿が漏れる
PC筋を鍛えることで尿道を締める力が向上し、尿漏れの改善だけでなく、予防にも非常に効果があるためおすすめです。
また、トレーニングを続けると骨盤底筋の機能が回復し、トイレに行く回数が減り、頻尿の改善にもつながります。
【ED改善におすすめ】PC筋の鍛え方を紹介
PC筋トレーニングは、手軽にできるセルフケアの一つ。
特別な道具も必要なく、場所も選ばないのですぐに始めることができます。
以下で紹介するトレーニング方法は、PC筋を意識して行うことでより効果が期待できるため、事前にPC筋の場所や感覚を掴んでから行ってみましょう。
尿道と肛門に同時に力を入れ、キュッと締めたときに骨盤の奥に引き締まる感覚があれば、そこがPC筋です。
ケーゲル体操
ケーゲル体操は、仰向けの姿勢や座ったまま、四つん這いや立った姿勢、いずれでも行うことができます。
初めはPC筋を捉えやすい仰向けの姿勢がおすすめです。
ここでは、仰向けでのケーゲル体操の方法を紹介します。
仰向けに横になる
仰向けの状態で横になり、両膝を立てます。
この時、体の力を抜いてリラックスしましょう。
PC筋を引き締める
大きく息を吸い、吐きながら骨盤底筋(PC筋)を引き締めます。
陰茎を持ち上げるようなイメージで行います。
PC筋を緩める
ゆっくりと息を吸いながら骨盤底筋(PC筋)を緩めます。
1〜3ステップまでを10回ほど繰り返し、1日に3セットほど行うようにしましょう。
ワイドスクワット
ワイドスクワットは、下半身の大きな筋肉を鍛えることができるトレーニングです。
足を肩幅の2倍ほどに広げる
この時、つま先は外側を向くように、視線は前に向け、背筋は伸ばしたままになるよう意識します。
ゆっくりと腰を落とす
姿勢をキープしたまま、息を吸いながらお尻を後方に突き出すようにして腰を落としていきます。
姿勢が前屈みにならないjように注意しながら、太ももと床が平行になるまで腰を落としましょう。
ゆっくりと立ち上がる
息を吐きながらかかとで床をしっかりと押して立ち上がります。
1〜3ステップまでを15回1セットとし、1日に3回程度行うようにしましょう。
肛門締めトレーニング
このトレーニングでは、骨盤底筋、特に肛門括約筋を鍛えることができます。
肛門括約筋を鍛えることで、尿漏れの改善が期待できます。
肛門を締める
お尻の穴にギュッと強く力を入れ、5秒間肛門を締めます。
力を抜いて肛門を緩める
肛門の力を緩め、10秒間弛緩させます。
なるべく早く肛門を締める
次に、キュッキュッと連続して肛門に力を入れます。
連続して10回行います。
1〜3ステップまでを1セットとし、1日10セット行うことをおすすめします。
ヒップリフト
ヒップリフトは、お尻の大きな筋肉である大臀筋を鍛えるトレーニングです。
姿勢の改善や腰痛予防効果も期待でき、下半身の筋肉を鍛えるのに適しています。
仰向けに寝る
まず仰向けの姿勢になります。
膝を立て、90度になるようにして足の裏で地面をしっかり捉えます。
お尻を持ち上げる
手は体の横に置き、手のひらを下にして力を抜きます。
ゆっくりとお尻を持ち上げ、肩と膝が一直線になるところでキープし、3秒数えます。
お尻を下げる
ゆっくりと持ち上げたお尻を下げ、床につかないギリギリまで下ろします。
1〜3ステップまでを10回1セットとし、1日に3セット行いましょう。
pc筋を鍛えすぎたらどうなる?
PC筋のトレーニングは、筋トレと同様、やりすぎは禁物です。
回数を増やすより、ひとつひとつの動きを丁寧に、正しく行うことが大切です。
トレーニングをしすぎた場合、体調不良につながることもあります。
性交痛や排尿痛・下腹部の違和感につながる
PC筋を鍛えすぎると、筋肉の硬化によって下腹部に違和感を感じることがあります。
また、性交痛や排尿痛を感じることもあるため、注意が必要です。
過度なトレーニングは筋肉の疲労につながり、疲労が続くと体調不良や免疫力の低下につながることも。
痛みや違和感を感じた場合は、トレーニングの頻度を見直すことや、トレーニング後にストレッチを取り入れるのもおすすめです。
トレーニングはバランスが大事
PC筋トレーニングは『鍛える』と『緩める』のバランスが大切です。
ED改善に効果的なトレーニングも、過度に行うと逆効果になることもあるでしょう。
トレーニングを効果的に行うポイント
- 違和感を感じたらトレーニングを中止し、休息を取る
- トレーニング前のウォーミングアップや、トレーニング後のストレッチを行う
- 1日に過度なトレーニングをせず、適度なトレーニングを毎日の習慣にする
無理のない範囲で長く継続することが重要です。
PC筋のよくある質問・Q&A
pc筋を鍛えるのにはダンベルが必要ですか?
下半身のトレーニングなので、ダンベルがなくても鍛えることができます。
PC筋トレーニングはどこでも簡単に行えるのが特徴です。
PC筋を鍛えるEMSはありますか?
筋力が極端に低下している場合や、運動が難しい方におすすめです。
また、初心者は最初は強度は低めに設定しましょう。
いきなり強い強度から挑戦するのではなく、少しずつ強度を上げていくことが大切です。
女性がPC筋を鍛えるとどうなりますか?
また、姿勢改善、腰痛予防、スタイルの維持・向上などの美容効果も期待できます。
まとめ
PC筋の鍛え方について紹介しました。
EDの改善には、血流を良くすることが必要不可欠です。
骨盤周辺の筋肉を鍛えることで、下半身の血行が良くなり、ED改善に効果が期待できます。
無理のない範囲で継続的に、この記事で紹介したトレーニングを行ってみてください。